ストレスや悩みや葛藤の根本を理解させてくれる「ザ・ワーク」の紹介

バイロン・ケイティのザ・ワークの効果

今回はお勧め本の一つ、「ザ・ワーク」を取り上げる。人間は迷い、悩み、怒り、憎しみ悲しみ、多くのストレスにさらされるものだけれど、そういった感情に振り回されて自分のコントロールを失うことが、さらに新たなストレスを連れてくることがある。

バイロン・ケイティの「ザ・ワーク 人生を変える4つの質問」はこういったストレスと葛藤にアプローチし、「現実は本来的に優しく、誰もがクリアな気持ちで愛と喜びの下で生きていける」ことを示してくれる画期的な本だ。この本がどのような考え方を示してくれているかを紹介する。

ザ・ワークでは「4つの質問」と「3つの置き換え」が肝心になる。その本当の効力をこの記事だけで説明することはできないけれど、質問によってどんな現実に気づけるかを概観することで、あなたがどこの誰だろうと、この本がメンタル面で大きな助けになってくれることを説明したい。



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メンタルに効果抜群の「ザ・ワーク 人生を変える4つの質問」


本書は著者のバイロン・ケイティとゲストの対話形式が主なコンテンツとなっている。ケイティはまずゲストに「ストレスのもとになっている誰かや何かを裁くようなストーリー」を考えてもらう。そしてそのストーリーに対して

「それは本当でしょうか?」
「その考えが本当であると、絶対言い切れますか?」
「そう考えるとき(あなたは)どのように反応しますか?」
「その考えがなければ、(あなたは)どうなりますか?」

という4つの質問を行い、さらにそのストーリーを

「自分自身のことに置き換える」
「主語を置き換える」
「内容を反対に置き換える」

といった原則に基づいて「置き換え」ることで、ゲストを縛っていた思考を解きほぐす。その結果、「Aは私にあんなことをするべきではない」というストレスを抱えていたゲストが、ワークを経て「Aは私にあんなことを<するべき>だ」という、全く真逆の思考で現実を受け入れることになる。

この具体的なやり方や心情の推移は本書を参照してほしいが、これらの対話を通してゲストの認知が変わっていくことを知るだけではなく、実際にシートを参考に読者がワークに取り組んでも、誰かや何かに対して抱えていた葛藤が消えていくことを実感できるのが、本書の素晴らしいところだ。

ザ・ワークがその中心に据える基本的な考え方、「現実を受け入れて自分のできることに集中すること」や「自分の中の執着に気づくこと」などは、多くの自己啓発書などで取り上げられている理屈ではある。だがその感覚や、実際にマインドを変えられた時の利益を腹の底から理解できるのは、本書を読んだ人の特権だ。

ザ・ワークはカウンセリングの記録を通して、「人を許すこと、オープンな感覚とマインドを保つこと」の効果を私たちに直接的に鮮やかにわからせてくれる。下の動画のように登場するゲストたちが長年抱えていた大きく苦しい悩みが、カウンセリングの中で解放に向かい、彼らが涙しながら感謝する感覚を、読者も少なからず体験することが可能になっている。



では実際にワークを通して私たちはどんなことに気づいていけるかを見ていこう。

必ず敗北するので現実と戦ってはいけない

ザ・ワークの第一の基本的な考え方として挙げられるのは、起きてしまった現実を受け入れるということだ。私たちは他人や周囲の出来事について、「あいつはあんなことをするべきではない」だとか「こんなことが起こるなんておかしい」という情念を抱きがちだ。

チームにおいても「負けるはずのない相手に負けた。あいつがきちんと日ごろから練習していれば。だからシュート練習をしておけと言ったのに」だとか「こんなジャッジはおかしい、審判は完璧に笛を吹くべきだ」といった思いを抱いてしまうことはよくある。他人や起きてしまった出来事についての感情的な裁きを下すことは、自分の想像以上に多く起きているものだ。

「~~は○○すべき、~~は××であるべき」という考えをしないことはメンタルをクリアに保つポイント。現実と戦わないこと。起こったことに抵抗しては心の平和は訪れない。真実とは「心で描く理想」ではなくいま現実に起きていることであり、真実と戦争しても必ず敗北する。

私たちが心を乱されるのは「現実」ではなく、「現実に対する考え方」だと「ザ・ワーク」は説いている。「~~べき」思考を離れ、あるがままの現実を肯定することがセルフコントロールの第一のカギになることを、質問と置き換えは理解させてくれる。

自分のことに集中する

次に大切なポイントとなるのは、「自分の領域で生きる」ということだ。現実を受け入れることとも関連するが、「誰かはこうするべき」だとか「自分でコントロールできないこと」で頭がいっぱいの時は、「他人」か「神」の領域で生きているとバイロン・ケイティは説明する。

現実と戦わないことと通じるが、他人のことは他人の、コントロールできないことは神の領域のことなのだ。私たち一人一人は自分のことを何とかすることしかできない。そこで他の領域のことについてあれこれと悩みや葛藤を抱えてしまうことで、大きなストレスを自分で生み出してしまう。

例えば自分の思い通りにならない子供を、あらんかぎりの言葉でしかりつけて矯正しようとする試みについても、著者は「人が○○すべきだ、とそれがその人にとっても最善だと、あなたは絶対に言いきれますか?」という問いかけで柔らかく制する。

「こんなことをしていてはロクな大人にならない」
「いま真面目にしつけておかないと将来は失敗する」

というような論理で多くの親は子供を抑圧する。そしてそれを愛だと主張する。だが冷静に考えれば、これらの意見はまるで現実的ではないことに気づけるはずだ。これらは私たちの防衛本能や恐れから生じている観念にすぎず、多くの人はそれに自分では気づけない。「本当にそうだと言いきれますか?」という問いは、こういった他人や神の領域から自分を解き放つチャンスをくれる。

自分の思い込みや執着を理解して離れる

私たちには自分が執着している考えがある。誰かや何かを裁くために無意識に使っている基本的な考え方・信じ込んでいるものが、自分では知らないうちに心の内側に存在しているのだ。著者はこれを「水面下のビリーフ」と呼ぶ。

先に挙げた「こんなことをしていてはロクな大人にならない」だとか「いま真面目にしつけておかないと将来は失敗する」というような考えは、「親はしっかりと子供を育てなければならない」だとか「子供は成功に向けて育てられるべきだ」というような、自分でも気づけない潜在的な思い込みからきているものだ。

これは自分のことにも適用できる。「仕事を辞めれば人生が終わってしまう」だとか「人には敬意をもって接さなければならない」といった自分の信念は、時として他人を裁く材料にもなりえる。だが「~~べき」ものが現実には存在しない以上、働いても働かなくてもいいし、敬意を持っても持たなくてもいい。そうして自分の内側から湧き出る執着に気づくことが、精神的な安定をもたらす。

自分の恐れや刷り込みによって無意識に思い込んでいる考えを理解すれば、その考えに捕らわれて自分や誰かを裁くこともなくなるのだ。水面下のビリーフが私たちに痛みをもたらすとき、それは実はまったく不必要なものなのだと知れる。これが「ザ・ワーク」が私たちに気づかせてくれることの一つだ。

執着に基づくストーリーを止める

私たちが根深い水面下のビリーフをもとに現実を見ると、時として苦しみが引き起こされる。「仕事を辞めたことで人生が終わってしまった。妻も子も自分のもとを離れたがり、友人からも地域からも見放されていっている。私はこのまま失意と絶望のもとで一生を送らなければいけない。ただ仕事を辞めたことだけで、こういった最悪のことが起こってしまった」

自分の考えへの執着が起きるとき、「AはBだからCになる」というストーリーが頭の中で際限なく膨らむ。「私たちが心を乱されるのは現実ではなく、現実に対する考え方」なのであって、実際には仕事を辞めても人生が終わることにはならないし、明るく朗らかに生きることもできる。だが水面下のビリーフに気が付けていない状態では、このような悪夢のストーリーを何度でも自分でなぞって苦しむことになる。

水面下のビリーフから来るストーリーを真実だと思っていると、それが自分のアイデンティティになっているため、それが本当だと証明するためにほとんどなんでもするようになる。これは信じがたいことに本当のことだ。「親が悪いから勉強に集中できない」という考えに執着した子供は、自らの考えを証明するかのように勉強しやすくなるような行動を一切とらなくなる。

「親は子供に勉強に集中できる最高の環境を与えるべき」は本当ですか? 「子供は親が集中させてくれないようなら勉強に繋がる行動を一切取るべきではない」という考えがなければ、あなたはどんな反応をしますか? というような、自分の考えへの検証が、不快なストーリーを止めて古い概念を突き破ってくれる。ワークは不快なストーリーの数と、自分を取り巻く世界の苦しみを減らしてくれる。

ストレスは使者だと考える

現実はいつも優しいものだ。あなたが混乱すると世界は混乱して見える。あなたが世界から受け取る感情は、あなたが世界をどう見るかにかかっている。自分でも意識しきれないビリーフやストーリーによって、あなたはしばしば優しいはずの現実から苦しみを受け取る。しかしこのストレスは思いやりのある目覚まし時計であり、あなたが抱えるストーリーが間違っていることを示してくれているといえる。

私たちは4つの質問によって、いつでもどこでも自分の思い込みから解き放たれ、ありのままの現実を喜びを持って受け入れることができる。自分が嫌いな人や、自分をむしゃくしゃさせるような最悪の出来事でさえ、ワークに取り組むことで「起きるべくして起きていること」だと受け止め、いつも穏やかな気持ちの中で生きていける。躍起になって解決しようとしていた大問題は消え、そこにストレスはなくなる。

あるがままを受け入れても、人から活力がなくなってしまうわけではない。あるがままでいることで、人は前向きになれる。ストレスや問題がなくても、愛は優しく行動させてくれる。すべきだとわかっていることをするのに、ストレスは必要ない。「あるがまま」はクリアに考えて行動させてくれるけれど、批判はあなたを制限してしまう。葛藤を感じたら、いつでもワークに戻ってくればいいのだ。

チームプレーヤーに「ザ・ワーク」を

チームの中でのコーチングやコミュニケーションに、本書は必ず役に立つ。私たちが上手く力を合わせられないことの原因の多くが、コーチや選手の中にある執着やビリーフに関連する防衛反応、とめどなく湧き出るストーリーなどに関係しているからだ。

フラットな自分を保ち続けることは誰にとっても難しい。言葉や意志で自分を強く律しようとしても、なかなか上手くはいかないものだ。そんな時は本書を手に取って、4つの質問と3つの置き換えに立ち返ればいい。世界を複雑で苦しく見ている自分自身に気づければ、仲間と調和しながら生きていく道があるとわかるはずだ。オススメの一冊。

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