攻め方の全体像を知る、用語でバスケがわかるシリーズ「戦術理解編」

バスケの攻め方の用語

バスケットボールは5人の戦術についての意思疎通がオフェンスに大きく影響する。あなたが何気なくバスケットボールの試合を観ているときも、そこには磨き抜かれた連携があり、一つ一つのプレイの「動き」や「形」には、この競技が長い歴史の中で生み出してきた名前がつけられている。

この記事ではオフェンスの戦略や動きを理解するための用語を解説する。戦略は体系化が難しく複雑だけれど、あなたがのちのち大きく成長していくためにも、これらの用語の輪郭を掴んでおこう。

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バスケットの戦術の全体像と用語の意味を掴もう


速攻時の展開

速攻はオフェンスの有効な展開だ。速攻はファストブレイクとも呼ばれ、ボールを保持した瞬間に相手陣地に走りこみ、ディフェンスの数的準備が整わないままに、ランニングプレイなどでシュートに持ち込むことをいう。速攻時に起こりやすい、オフェンスの人数がディフェンスの人数より多い状況をアウトナンバーといい、オフェンス一人でシュートに持ち込む状況をワンマン速攻という。

アウトナンバーに対して、ディフェンスよりオフェンスの人数が少ないことをオーバーナンバーといい、数的同数の場合はタイトナンバーという。これらのケースでは無理して速攻をしかけない方がいいと考えられているが、個々の選手の力量によってはシュートまで持ち込むことも可能なため、チームとして最適な形を一瞬で選ぶことになる。

速攻はたいてい起点のガードにボールが渡ってはじまる。ガードがサイドライン沿いに開いてボールを受けることをサイドアウトという。先頭を走るランナーをリードマンという。また、数的準備が整っていても完全に守る準備ができていない状況で攻め込むことをアーリーオフェンスという。セカンダリブレイクとも呼ばれ、広い意味で速攻の一種だ。

アーリーオフェンスではよくトレイルというプレイが狙ってなされる。これは先行するオフェンスがカットした後に、後続のオフェンスが同じように飛び込んでいくプレイだ。これによってバックコートから走ってきた勢いのまま、連続した攻撃が可能になり、ディフェンスが対応する間を与えずに攻撃できる。

アーリーオフェンス

速攻を主体にしてシンプルに走って攻めることはランアンドガンと呼ばれる。これに対し、5人でゆっくりとフロントコートでシュートチャンスを作るゲームをハーフコートオフェンスという。オフェンスからディフェンス、ディフェンスからオフェンスのような切り替えをトランジション、またはコンバージョンといい、速攻のやりあいなどで切り替えが何度も起こる速いゲーム展開のことをトランジションゲームという。

ハーフコートバスケット

速攻が有効な攻撃手段だとはいえ、多くのシュートはハーフコートオフェンスにより生み出される。起点となるのはやはりポイントガードだ。主にポイントガードが担う、チームの効果的なオフェンスの試みをゲームメイクという。

ボールがガードなどの手によってフロントコートに運ばれることをダウンコートボールダウンといい、ここからハーフコートオフェンスは始まる。ダウンコートにはパッシングダウンという方法があり、これはドリブルではなく主にパスでダウンコートを行う方法だ。バックコートのポイントガードに対して、先行するフロントコートの味方選手が戻ってきてパスを受ける動きはフラッシュと呼ばれ、ガードにプレッシャーがかかっている場合に行われる。

多くはドリブルでのダウンコートとなるが、この役目を担うのは1人のポイントガードとは限らない。ボールを運び、ゲームを作る能力のあるガードを2人、3人と複数起用してオフェンスする形を、ツーガードスリーガードという。これらの場合、ダウンコートをドリブルでもパスでも柔軟に行えるようになり、ディフェンスのプレッシャーによるリスクを低減できるメリットがある。

オフェンスについて語るとき、このダウンコートからの導入部分をエントリーという。エントリー時には、個々のプレイヤーがお互いの距離に気をつけてコートに展開した上で、ある程度決まった形でオフェンスをスタートさせる。競技の性質上、個々の選手が固まっているよりも、適度に距離をおいて広めに散らばっていた方がディフェンスを効果的に攻略できる。この選手の位置のバランスをフロアバランスという。

チームによって最適なフロアバランスは異なり。これはチームが指向するバスケや5人のポジションによって変化する。たとえばもっとも一般的なチームはアウトサイド3人、インサイド2人の「スリーアウトツーイン」の形でオフェンスに入る。しかしインサイドに1人しか配置しない「フォーアウトワンイン」のチームもあるし、インサイドに目立った長身の選手がいない場合は「ファイブアウト」、まれに「2アウト3イン」がみられるときもある。

エントリー時にチームが指向するフロア上の配置をセットアップといい、オフェンススタート時は選手たちはセットアップを意識して散らばることになる。たとえばワンフォーというのはトップに1人、両ウィングに2人、両エルボーに2人を配置するセットアップだ。「ワンフォーで攻めろ」というように、その形からはじまるパターンオフェンス自体の名称のように使われることもある。

フロアバランスを保つためには、個々人がお互いの距離感について適時しっかりと判断し続ける必要がある。そのため自分がいる位置が適切ではないと判断すれば、その場所から速やかに離れることになる。この動きをクリアといい、このため前や横だけではなく後ろに下がるバックランニングなどの動きも必要になる。

エントリーではチームで共有する数字や単語がポイントガードが叫ぶことがある。これをコールという。コールはチームがそのオフェンスにおいて、特定の動きのイメージを共有するために行われる、いわば作戦名の伝達だ。

コールが行われた場合、多くのチームはナンバープレイと呼ばれる「フィニッシュまでの形が決まったオフェンス」か、パターンオフェンスと呼ばれる「ボールを持っていない人間の動き方が決まったオフェンス」を展開することが多い。また特にチームに決まり事がない場合は、フリーランスオフェンスと呼ばれる、個々人がそれぞれの判断で動く方法でオフェンスが行われる。

オフェンスには様々な形態があり、それらにまつわる用語を完全に形態化することは難しい。そしてその難しさがバスケットボールという競技のオフェンスへの理解を困難なものにしている一因だ。

フリーランスオフェンスとはその名のとおり、選手に自由が認められているオフェンスのことだが、各人が自由に動きすぎて上手くいかないことがある。これをパターンオフェンスで動きを決めることで解決してしまうと、個々人を縛りすぎる結果になりがちだ。そこで導入されるのがモーションオフェンスになる。

モーションオフェンスとは、ある程度の決まりごとの中で、選手個々人が動きを判断できる局面が多数設定されているオフェンスのことだ。選手たちは共通理解をもとにある程度の形を作ろうとする中で、チャンスだと判断すれば自分の判断でシュート機会を生み出すことができる。モーションオフェンスはチームごとにオリジナルなものを作ることが可能で、有名なものにトライアングルオフェンスプリンストン・オフェンスなどがある。

参考記事:ブルズとレイカーズを優勝させた、トライアングル・オフェンスの解説

フレックスオフェンスシャッフルオフェンスのように、形ではなく動きのイメージの名前がつけられているパターンオフェンスもある。これらのオフェンスは左右のサイドからインサイドへ連続したカットを行うことが特徴だ。これらのオフェンスの場合、チャンスを作れる場面が限定的になりがちなので、個々人の裁量がオフェンスの結果を左右する色は比較的薄く、動きをスカウティングされやすい。

参考記事:バスケットのシャッフルオフェンスの特徴と基本の動き方、条件を解説

局面での用語

5人による統制の取れたオフェンス全体だけではなく、個々の局面で使われるコンビネーションプレイやある程度の方針などにも名前はついている。たとえばアウトサイドへ飛び出しやすいようにスクリーンをかけるフォーメーションを組むスタック、ディフェンスの背後にパスを通してボールをつなぐバックドアなどだ。

得点力の高いボールマンにスペースを与えるために他の選手がヘルプサイドに寄る事をクリアアウトといい、こうしてオフェンス1人対ディフェンス1人のワンオンワンをさせる戦術をアイソレーションという。また、ここでワンオンワンを仕掛けるというような場所をオペレーションゾーンという。

ワンオンワンでマッチアップ相手を攻略すると、多くの場合ディフェンスは協力して複数人でカバーディフェンスを試みる。その際にはディナイが外れやすくなっているので、ボールマン以外のオフェンスがパスを受けてシュートチャンスを得ようと適切に動くことが大切になる。これを「あわせ」の動きという。また、レシーバーがボールを受けられる状況をオープン、ディフェンスが全く守れないでフリーでシュートを打てるような状況をノーマークワイドオープンという。

これらオフェンスの様々な試みは、結局のところシュートチャンスをいかに作り出すかという、バスケットボールの根本的な問題のために生まれたものだ。チームが共有する「どのようにシュートチャンスを実現するか」という基準をシュートセレクションという。また、シュートまでたどり着けずに、相手にボールを渡してしまうケースをターンオーバーという。

ディフェンスがゾーンディフェンスをひいた場合、ワンオンワンで攻めることは難しく、連携した動きとパスワークでディフェンスを攻略することになる。ゾーンディフェンスでディフェンスとディフェンスの間の責任があいまいにある場所をギャップといい、多くの場合その地点にパスやドリブルでボールを入れることがポイントになる。また、どちらか片方のサイドにオフェンスが寄って、役割分担でハーフコート全体を守ろうとするゾーンを機能させないようにすることをオーバーシフトという。

サイドのことを言えば、ボールマンがいるサイドをボールサイドといい、逆をヘルプサイドという。また、ボールを持っている選手から見てエンドライン側をウィークサイドといい、逆をストロングサイドという。エンドライン側はヘルプディフェンスを用意しづらいため、「ウィーク(弱い)」サイドになっているのだ。このサイドの用語はコーチが頻繁に使う言葉になるので覚えておこう。

また24秒ルールを利用して、シュートチャンスをあえて24秒オーバー直前に作り出し、互いのオフェンスの回数を減らしてロースコアゲームに持ち込もうとする試みをディレイドオフェンスという。また試合終盤で勝っていた場合に、逃げ切りを図るためのこのやり方を採用する場合をストーリング(ディレイドゲーム)という。

教材:ディレイオフェンス~あなたのチームが強豪校に勝つためのオフェンスパターン~

カットについて

これまでのようなオフェンスの全体的な動きを構成しているのは、個々人のディフェンスのマークを外してボールをもらおうとする動きであるカットだ。

バスケットボールにおいて1on1以外でディフェンスを崩そうとすればパスの力が必要になるが、多くの場合ディフェンスは、パスが通る軌道であるパスライン(パスコース)をディナイディフェンスなどで切っていたり、パスをされてもシュートはされないようにマークマンの近くで万全の準備をしている。

このためオフェンスにはディフェンスの守備範囲から逃れ、効果的にシュートチャンスを作れるような動きをする必要性が生じる。このコート上を移動する動きをカットという。ちなみにこのカットとパスを連続して行うことをパスアンドカット(パスアンドラン、ギブアンドゴーとも)といい、このやり方でディフェンスを攻略するやり方を強調してパッシングゲームという。これはモーションオフェンスとほぼ同義で、1on1で図抜けた能力がなくても効果的に攻められると考えられ、多くのチームが指向するゲーム展開の一つだ。

参考記事:バスケのオフェンスの動きの考え方、パッシングゲームの攻め方の話

カットには様々な種類がある。Iカット、Vカット、Lカット、Cカットという、動きをアルファベットで表した4つが一般的だが、動いたときの状況や位置によって呼び方が異なる。インサイドに切れ込んでいくような動きをカットイン、アウトサイドに飛び出すような動きをカットアウト(ポップアウト)という。

また、自分のマークマンの前を横切るような動きをフロントカット(スクエアカット)といい、背後を切るような動きをバックカット、ボールから離れるように動くことをフレアーカットという。また、カールカットとはスクリーンを受けた選手が、スクリーナーのボールサイド側を通ってインサイドに切れ込んでいく動きである。カットについて詳しく知るためには、下の記事を参考にしてほしい。

参考記事:バスケのオフェンスの基本的な動き方を理解する、種類別カットの解説

スクリーンプレイについて

カットに続いて重要になるのが、ディフェンスが移動するコースに立ちふさがることで、味方オフェンスを自由にしてあげるスクリーンプレイだ。スクリーンプレイには様々な形があり、それを言葉で表現するための用語も多様だ。一通り解説しよう。

スクリーンをかける側をスクリーナー、スクリーナーに自分のディフェンスを足止めしてもらってフリーになる側をユーザーという。ユーザーはディフェンスが追って来れないように、スクリーナーの肩をこするようにしてすれ違うのが成功のコツになる。これをブラッシングという。

スクリーンをかける方向によっても名称は変わる。エンドラインに対して水平に両足をセットしてかけるスクリーンをラテラルスクリーンといい、対して垂直に両足をセットしてかけるものをバーティカルスクリーンという。

またハーフライン方向にユーザーを行かせようとするスクリーンをダウンスクリーンといい、エンドライン方向に行かせるためにかけるものをバックスクリーンという。更にボールマンから遠ざかるような動きをさせるスクリーンをフレアスクリーンという。

スクリーナーが2人並んでかけるとき、それはダブルスクリーンと呼ばれる。パターンフェンスなどで、特にシュートチャンスを作り出したい局面で使用されることが多い。サイドを変えるような大きな動きをする選手がダブルスクリーンを使用する際、そのダブルスクリーンをカーテンという。また、2枚のスクリーンが違う位置にセットされるようなかけ方をスタッガースクリーンという。

パスをした後ボールサイドと逆のサイドに向かってスクリーンをかけに行くことをスクリーンアウェイという。ボールマンにかけにいくスクリーンもあり、これは多くの場合インサイドスクリーンと呼ばれる。スクリーンによってボールマンのディフェンスの邪魔をできれば、得点のチャンスは一気に大きくなる。

ピックアンドロールと呼ばれるプレイは、スクリーナーがスクリーン後にインサイドに向かってカットすることで、ディフェンスを収縮しやすくする。これは2対2を仕掛けるうえで非常に効果的なプレイだ。また、スクリーンをかけた後、外に開いてボールをもらおうとするプレイをピックアンドポップという。

ボールマンがインサイドスクリーンを利用してドライブし、一気にゴール下に迫ることをドライブトゥーザゴールといい、ディフェンスの虚をついてスクリーンをかけてくれた方と逆側を抜いていくのをエクスプロージョンという。また、ボールマンにスクリーンをかけると見せかけて、スクリーナーがインサイドに急にカットしてボールをもらおうとする動きもある。これはアーリーリリース(スリップ)と呼ばれるプレイだ。

また、ボールマンに対して自分のディフェンスをぶつけるようにして動き、ハンドオフパスでボールを受け取って攻めるプレイもある。このボールマンによるスクリーンをアウトサイドスクリーンといい、このプレイ自体をピンチポストという。ピンチポストの際に、ボールマンがハンドオフパスをすると見せかけてゴールに向かっていくプレイをアラウンドトゥザゴールという。

このようにスクリーンプレイはカットと並んで非常に多彩で重要な領域だ。詳しく知っておくことが、バスケットボールの理解には欠かせないだろう。

>参考記事:バスケットのスクリーンプレイを成功させるためのいくつかのコツ
参考記事:バスケのピックアンドロールのやり方と守り方のコツを書いた本の紹介
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